3.11 震災・原発事故の背景(2012年2月24日までのデータ版)

前に投稿したエントリーで提示していたデータのアップデートをしたので再掲します。
(注:最初のエントリーから微妙にアップデート。)

基本的な論点などは以前のものに準拠しますので、ここではアップデートした図だけ掲載します。
前エントリーはこちら
http://d.hatena.ne.jp/r_shineha/20120123/1327302261

また、最初にデータを公開したTwitterでの呟きを、kei_sadalsuudさんがまとめてくださいました。
http://togetter.com/li/271791


※以下のデータは、2012年2月24日までに政府・自治体などから公表されているデータを元に作成しています。またあくまで自治体という単位に注目したデータであることにご注意ください。

またこれらのデータを元にした原稿をとある本に寄稿します。
早稲田大学の田中幹人さんらとの共著本として出る予定のもの、また別の本のブックチャプターとして寄稿するものと二つが予定されています。
前者については初稿の脱稿がすみ、筑摩選書さんから出させていただく予定です(上手くいけば7月くらい??)。



以下、データ

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※これらの事柄をきちんと検討する際、本来であれば、それぞれの地域の歴史的検討や、また産業構造や世帯に関するより詳細な分析、ミクロの文脈へのアプローチが必要。


しかし、これらのプロット群は、少なくとも自治体レベルにおいて、特に津波の被害を受けた地域において被害格差と経済格差があることを示している。
津波が襲ったのはどのような地域だったのかの一端は少なくとも示されていると考えられる)
ここで提示される問題は、日本における格差・貧困の問題と不可分。

そこで、参考までに、日本における貧困・格差をめぐる概要・傾向の一つを提示しておきたいとおもいます。


(この点については、最近の本では、阿部彩「弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂」などで提示される視点が関係してくると思う)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062881357


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また、どうしても心配になり、2011年度中の東北三県における自殺者数を警視庁統計から調べてみたり。。。
※ただし、これは亡くなられた方が見つかった場所でのカウントのため県外避難先での状況を反映していない点に注意

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また阪神・淡路大震災の際に神戸市長田区などで生じてしまった事柄は、教訓として活かす必要があると考える。
今回の東日本大震災でも生じうる事態の危惧の一例として。
(実際に、どういうことが同じ性質の事柄として生じうるか/生じてしまっているかは、より詳細な調査が必要)

阪神震災前後の長田区における人口の変動

結局、いくつかの先行研究を見るならば、震災前後の長田で同じ地域に残れた割合は2割程度と考えられる。
この点については、次のエントリーを参照されたい http://d.hatena.ne.jp/r_shineha/20111126/1322328913

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また、これらのデータのソース元一覧はこちら




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※最後に(念のための但し書き)
何度か書いているかもしれませんが、標葉は出身ということもあり、宮城県福島県浜通りには縁はあるものの、私自身は関東にいたため被害・被災は免れることができ、また幸運にも家族にも怪我はありませんでした。
そのため、被災者という形で語ることや代弁はできません。
(サイードスピヴァクなどが記述者に対して要求していることは正しいと思っています。)

しかし、被災や被害の代弁はできませんが、地元出身の学者・社会調査屋としてせめて出来ることをしていきたい(それは私の場合、出来る範囲での調査ということになります)というのが基本的なスタンスであります。その点だけ、もう一度記しておきたいと思います。

しかし、震災以前の格差、そして震災による被害の格差をスタートとして、その格差が今後において固定・拡大されていってしまうのではないかという危惧を強くもっています。
そして、このままだと、震災の背景にある、そして今後ますます顕在化してくる一方で、そのようなさまざまな問題は忘れられていってしまうのではないかという危惧も持っています。
(実際、メディア分析などもしていますが、話題/関心の中心は基本的には原発事故という問題にあり、地震津波の被害やその裏にある社会構造的な問題は背景になってしまっているという認識と問題意識を持っています。但し、勿論、原発事故も大問題ですので、どちらかということではありません)