若手による雑感(根拠の薄い妄想)−その1

こういう分野をやっていると、

STSって結局なにやってるんですか??」

と聞かれることが、まあそれなりの頻度であったりします。
で、先日、なんか身体が熱っぽいなあと思いつつネットをみたら、こういう話題で盛り上がっている方々がいらっしゃったので、まあこの機会に一度雑感をまとめておこうかなと思ったり。
(このあたりは、オフラインでもお会いしている方々には、まあ割とよく話している事柄な気はしますが)


STSは、"Science & Technology Studies"または"Science, Technology, and Society"の略になります。この二つの言葉については、次回のエントリーで少し突っ込んでみます。
(7月27日アップしました:http://d.hatena.ne.jp/r_shineha/20120727/1343398677)

しかし、「STSって何?/STSって何してるの?」てな広い疑問に短く答えるのは、なかなかに難しくて、まあ何から書くべきかというのは結構悩みます。
そこで、まあ以下のものに関する個人的な話とか妄想を徒然につづってみて、なんとなく感じて頂く、というやや卑怯な手段に逃げることにします。

①なんでSTSとか始めたの(興味をもったのか)?/個人的な興味と問題意識について(なんだか自己紹介的な)
STSって何よ?/二つの略語としてのSTS
③で、結局STSってどういうことしているの?/3.11以前・以降における日本のSTSについても触れつつ

当然のことながら、これらを一つのエントリーにまとめるのは大変厳しいので、3つの記事に分けて投稿したいと思います。
ですので、このエントリーでは、話のとっかかりとして、①「なんでSTSとか始めたの(興味をもったのか)?」について、名状しがたき個人体験記のようなものを垂れ流すことにしたいと思います。
(話のとっかかりになるの??かなあ。。。)

ですので、まあ、なんというか、余り考えずに垂れ流すかんじなので、冗長で要領を得ない記述が続きます。
また、当然のこと、色々とすっとばした雑な記述であり、精緻とは程遠いものです。
(リファレンスもロクにしていない、本当に個人的な雑感でしかないものです)

予めご了解ください。


あと、一つ強調させていただきますが、以下連続するエントリーについては、

※「但し、ここからの連続エントリーで書く話は、この分野に来て10年も経っていない若手の、根拠の薄い個人的雑感(妄想)ですので、例えば分野や学会の声を代表するものではありません。」

その点、強調しておきます。


また、このエントリーの前に、林岳彦さんが以下のエントリーを投稿されています。
Take a Risk: 林岳彦の研究メモ
http://d.hatena.ne.jp/takehiko-i-hayashi/20120726/1343232391
このエントリーはリスク評価の分野にいる林さんの視点からみたSTSという形で端的にまとめられており、標葉の問題意識や理解とも多く重なるものであります。

今からだいたい3回くらいに分けて投稿するエントリーの中で、林さんの提起に少しでも補足できるようなものになればなあと思います。
(次回と3つ目のエントリーがそれなりに相補的になればと期待)
ですので、人によっては後日アップする2つ目、3つ目のエントリーだけ読んでいただく感じでも良いかなと思います。

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<なんでSTSとか始めたの(興味をもったのか)?/個人的な興味と問題意識について>

STSという分野における「問い」は色々とありますが、すっごい抽象的なレベルで言えば、例えば次のようなものが有り得るかなあと思います。
(詳しくは、次のエントリーで叙述したいと思いますが、話のとっかかりとして、適当なことを書きます)

(Q) 「科学/技術」の社会的機能とは?
(Q) 「科学的知識」の構築/拡散の過程はどのようなものか?(専門知識や研究者のネットワークに注目したり)
(Q) 科学技術(政策)をめぐる意思決定の在り方とはいかなるものか(どうすべきか)?
(Q) ある分野の「科学」の発達と社会的背景や文化との関係ってどういうものか?(優生学統計学の関係とか、宇宙開発と冷戦、などはまあ分かりやすい例かもしれません)

で、例えばこういう基礎的な関心からスタートして、もう少し実際に取り組める具体的な事例やテーマにフォーカスをしていきます。
そこで、例えば生命科学の社会的・倫理的側面に興味がある人であれば、

(Q) 遺伝子組換えや幹細胞研究をめぐる倫理的・法的・社会的課題の現状と背景とは?

というようなもう少しフォーカスしたテーマを取り上げて、さらに具体的な話や、より適切なリサーチクエスチョンへと降りていきます。
(例えば、遺伝子組換え生物(GMO)を事例にする人もいれば、幹細胞・再生医療研究、ゲノム研究などのトピックスに注目したりしてそれぞれ調査・研究を進めていくわけです)

そして、そうやって見つけた「問い」に、社会学歴史学・哲学・倫理学・人類学・政策科学・メディア研究などなど、いろいろな観点やアプローチを参照点としつつ取り組んでいくことになります。

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さて、じゃあ、なんでまた標葉は、STSなんて分野に足をつっこみ始めたのか?ということですが、、、

標葉が、STSという領域に足を突っ込むようになったのは、「社会の中での科学技術の位置づけ(または科学技術をめぐる社会構造)」や「科学技術の社会的機能」、「科学技術の語られ方」や、「専門知の共有ネットワーク」といった事柄に興味を持ったことによります。

大学入学後にあまりに暇だったため、時間に任せて人文・社会科学系のものをいろいろと読んでいくうちに、現代社会において外せない要素の科学技術についての人文・社会科学系テーマをやろうかなと思った次第で、、、
そこで科学と社会についてのあれやこれやについて、とくに現代的な話を幅広く研究している分野ってのはあるのかなあ?って思って調べたら、STSに行きついたって感じでしょうか。

そして、例えば、遺伝子組換えを巡る社会的な論争に決着をつけたい!とか、何かの社会問題を解決したい!とか、そういうのではなく、対象となる事柄を研究として精査することで、「(表面からは見えにくい)構造的な問題」や「(科学技術が図らずも)抱えてしまう様々な・多方面への影響力の実像」、「科学の社会における機能や適切な位置づけ」について明らかにしたいといった、非常に「基礎的」な学術的興味からスタートした感じになります。

という感じですので、これも次のエントリーで詳述しますが、例えば(遺伝子組換えを主な注目トピックとして)「科学技術への市民参加」みたいなテーマで調べていたこともありますが、少なくとも当時/比較的最近まで実践的に何かするとかは考えてなくて、あくまで"Studies"として検討するというのが当初ありました。
(ただ、実践にはさほど興味はありませんでしたが、科学技術をめぐる制度とか、科学技術政策についてはかなり興味があったので、むしろそちらの話題として調べていた感じでしょうか。)

さて、ではもう少しだけ具体的に何を興味として取り上げたかというと、学部時代にバイオテクノロジー系のところにいたこともあり、(またやはり興味はあったので)生命科学が社会において持つインパクト(PositiveにせよNegativeにせよ)、また生命科学を巡り生じる各種の問題などに注目することにしました。
例えばですが、

・遺伝子組換えにせよ、幹細胞・再生医療研究にせよ、これらは社会の中でどのような意味や影響力をもっているのか(場合によって図らずも持ってしまうのか)?
生命科学これまでに/これからそのような問題があったのか//またその影響は階層や地域や検討レベルの違いに応じてどう異なるのか?
・遺伝子組換え/幹細胞・再生医療研究について、社会はどのような意識をもっているのか?
・遺伝子組換え/幹細胞・再生医療研究をめぐる言論は、どのように展開されてきたのか(されているのか)?どのような話題に関心の中心だったのか?(を量的に検討する)
・科学技術政策の中で、これらの事柄をどう扱うのか/扱えるのか?

こういった事柄について注目しようとしてきた感じです。
海外まで含めれば、STSの分野では、こういった生命科学をめぐる様々な課題について多くの「研究」がされています。
(但し、論者によっては、それは必ずしも生命科学の社会受容を目指すものではなかったりします。勿論論者によっては逆の立場の場合もあるし。そもそも敢えてそういう結論を目指さずに現状の状況分析に徹するというのもあったり。そのあたりは、スタンスはかなり多様で、それはそれで健全な姿かなあと思ったり)
(ただある程度共通しているかなあと思うのは、「社会の構造」とか、「社会の中での語られ方」とか、「(問題をめぐる枠組みやプロセスの)正当性/正統性」、「アクター/セクターによる『フレーミング(問題の枠組み設定・優先付け)』の違い」、「関連するアクター間の関係性(人に限らずモノにも注目)」、「権力構造(力関係)」とかに注目することは多いかなあ)。

で、ここでにあげたようなトピックスを巡る議論や問題では、例えば、「科学的に正しい」とされたとしても、社会的に受容されない事象などもあり、そこには様々な背景があったりします。
(例えば国レベルでのベネフィット/リスクと地域レベルでのそれが異なっており、そのために国はOKでも地域社会においては到底受け入れられないとか、また社会階層での違いとか、時間軸での違いとか)。
また、場合によっては、何かしらの事象をめぐる社会構造上の問題や、利害関係の衝突があったりもします。

そういう単純に捉えることが出来ない事柄の内実を詳らかにすることなどは、STSの役割の一つであるし、蓄積があるかなと思っています。
(海外ジャーナルまで含めれば、いろいろな研究やら調査やらデータやらが、まああるという。)
また、そのなかで(またその蓄積の下で)、林さんが先述のエントリーで端的に書かれている『社会の側から見た科学の「正当性」と「正統性」を問う』という試みをする分野なのかなという考え方はあるのではないかとも思います。
http://d.hatena.ne.jp/takehiko-i-hayashi/20120726/1343232391

そういった蓄積を参照しつつ、日本の状況や、より異なる事例や事象に目を向けて検討を行うということが必要になるのかなという意識があります。
また勿論、STSに限らず、社会学にせよ、社会心理学にせよ、経済学にせよ、文化人類学にせよ、リスク分析にせよ、etcにおいて、いろいろな関連する研究があります。
(またはそういった分野の研究者がSTSの研究としてジャーナルに論文を投稿したりします。あとは、STS研究者も人にそういう分野の論文を読むこと多々あります)

そういった事柄を踏まえて、標葉が力不足にもほどがあるけれど少しばかりやってきたのが(まだまだ全然できていないことが多すぎるのですが)、例えば、

>遺伝子組換え/幹細胞・再生医療研究をめぐる社会的言論・意識の計量的分析
>遺伝子組換え/幹細胞・再生医療研究をめぐる議論/制度・市民参加の在り方の検討

とかの分析だったりします。
(早く論文書け〜〜って声が聞こえてきそうです・・・ごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんさい)

他にもプロジェクト調査ものの一環として、「生命科学者における科学コミュニケーションへの意識」(科コミって言葉がはやってるけれど、ぶっちゃけどう思っていますか?)の調査などもしたり。
また、より最近では、科学技術イノベーション政策に関連する研究などにも関わっています。
(科学技術政策自体は、かねてより興味があったので)

ただ、最近は、どうも大学院入りたてから数年くらいの頃のように"Studies"だけやってりゃいいだろうではなく、もう少し"Society"を意識しないといけないということを強く思うようになっています。
昔は、"Studies"が結果として"Society"に活かされればい〜じゃ〜んっていうノリでしたが、いやいや自分、こういうテーマに関わるならもっとちゃんと"society"との関わりを意識しようよという心持でしょうか。
(ただ、ここで誤解をされたくないのは、基礎にせよ応用にせよ、自然科学にせよ人文社会科学にせよ、"Studies"にしか興味がないというピュアな研究者の存在はむしろ必要と思っています汗)


ということですので、専門は何?と聞かれた場合、一応こう答えています。
科学技術社会論」、「科学計量学」、「科学技術政策」
(学会で言うと、科学技術社会論学会と研究技術計画学会がメインになります。)

なので、基本的には、(これってどういうことになっているのかについて)「知りたい」とか、これの中身がわかったら「面白そう」という話からスタートすることもあれば、
「政策的」に重要なイシューだからこの調査をしてみようというレベルまで、色々とすることになっていますし、しています。
(政策への関与は、とくにこの3年くらいで実際的に結構増えてきたかなと思っています。)


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ってことで、何かのとっかかりになるかなあと思ったので、一若手の個人紀などをだらだらと書いてみました。
(ならねえよ!って罵声が聞こえてきそうです大汗)

うむ。とりとめが全くないでござる。
このド低能がぁ!!!って罵られても文句の言えないレベル・・・。

ただ、次のエントリーでは、もう少し「STS」という分野も一枚岩ではなくて、いくつかの異なる側面を含んでいることについての妄想を描いてみたいと思います。
またそのあと3回目のエントリーでは、とりわけ、ここ1年半くらいに具体的に何をしていたのかについて、少し書いてみたいと思います。
(ただ、アップするまでに数日、少し時間をいただくかと思います。ごめんなさい)


※しかし、とまあ、こういうわけでして、ここまで読んでいただけた方はすでに予想がついていらっしゃるかもしれませんが、
割と最近まで、例えば原発問題などには、あまり興味がありませんでした。そこにある色々な課題についても目を向けてきませんでした。
(ぶっちゃけると、3.11が起きてしまうまで、地震にも、津波にも、災害にも、原発にも興味がなかったのです。今ではその長きにわたる不明を恥じています。)
これらの点についても、次回以降のエントリーにて触れていきたいと思います。


エントリー2つ目:若手による雑感(根拠の薄い妄想)−その2
http://d.hatena.ne.jp/r_shineha/20120727/1343398677